クリニック通信

2025年9月27日小麦のアレルギー

こんにちは。色々あってしばらくブログをさぼっているうちに暑い暑い夏も終わってしまいましたね。ヒマワリも朝顔も退職届を出し、マリーゴールドは日日草の上に乗っかってだらけています。「う~ちゃ」は夏の間も元気にピュルピュル、ピーピー言いながら待合室で遊んでいます。

 

久しぶりに食物アレルギー(小麦)のお話です。小麦は乳児期の食物アレルギー原因食材として卵・牛乳に次ぐナンバー3、成人ではナンバー1になります。

最初に一般的な食物アレルギーの診断ポイントをおさらいしましょう。

私は大雑把に2つの視点(時間的に合うか、再現性があるか)で判断します。

【時間的一致性】一般的な食物アレルギーは「即時型反応」と言って、食べてから殆どが30分以内に、遅くても2時間以内に症状が出現します。症状の86%は発疹(口周りから顔、全身へ広がっていくぼこぼこ盛り上がった赤い発疹)で、加えて咳などの呼吸器症状(38%)、嘔吐などの消化器症状(27%)を伴うこともあります。食べて半日も経ってから湿疹が増えたり、下痢をしたのであれば、食物アレルギーは考え難くなります(例外的には遅延型反応もあります)。

【再現性】食べる度に症状が出る場合に疑います。初めて食べて起こした場合はまだ何とも言えません。口周りの発疹などの軽い症状なら、同じ食材を同じ量でもう一度食べて再現性を確認しましょう。つい最近まで普通に食べられていたのにある日突然発症することはありません。また、症状は食べた量と比例します。体調が悪くない限り、普段食べていた量より少ない量で起こすことも殆どありません。再現性がなければ食物アレルギーは考え難くなります。

【間違われやすい症状】

食べたら口の周りが少し赤くなっただけで、食物アレルギーと思われてしまうことがあります。口の周りはもともと皮膚が弱く、涎などで荒れがちで、付着した異物に反応して赤くなることがあります。これは接触皮膚炎と言って食物アレルギーではありません。仮に食物アレルギーだとしても非常に軽い症状です。このような場合はスキンケアを行いながら数日空けて同じ量をもう一度食べてみましょう。その際は口の周りにワセリンを塗って食物が直接皮膚につかないように配慮してみると良いかもしれません。

【血液検査は必要?】

アレルギー血液検査はあくまで参考に過ぎません。症状がでないのに検査値のみ陽性になることも少なくありません。結果だけを見て不安になって除去してしまう方もいます。明らかな食物アレルギーでも軽症なら除去は最小限が望ましいと言われています。検査が陽性でも摂取して症状が出ないか、ごく軽微なもの(口周りの少しの赤み)の場合は、食べ続けることによって体が受け入れるようになります。一方、厳密な除去を続けて受け入れる機会を奪ってしまうと、症状が増えてしまうこともあります。小さなお子さんにとって痛みと恐怖を伴う血液検査は最小限が望ましく、私は症状を重視し検査は最小限に留めています。

【小麦のアレルギー】

小麦は加熱するとアレルギー物質の減る卵と違い、加熱加工によってもアレルギー物質の量は変わりません。但し、小麦は製品によって含まれる小麦の量が異なります。薄力粉<中力粉<強力粉の順で含まれる小麦の量は増え、同じパンでも食パンに比べてフランスパンでは使用される小麦量が多くなります。同じ麺でもパスタやそうめんはうどんよりも多くの小麦を含んでいます。また、パン教室などで舞い上がった小麦を吸い込むと気道で炎症が起こって咳や喘鳴が出ることがあります(baker’s astma)。うどんは製品が違っても小麦の使用量がそれ程変わりません。発酵食品である醬油や調味料はアレルギー物質が分解されるので、滅多に症状は出ません。

小麦アレルギーと診断した場合は過去の摂取歴を確認して、症状の出ない摂取量が分かれば、その量は敢えて食べ続けてもらいます。その方が体が少しづつ受け入れて最終的に軽快する時期が早まるからです。

赤ちゃんの場合は3歳までに半分、6歳までに8割の方が普通に摂取できるようになります。最後に症状が出た1年後を目安にうどんによる負荷試験を段階的に行って食べられるようになっているか確認します。3歳以上なら一玉(200g)摂取出来たら小麦アレルギー卒業です。半玉(100g)食べられたらホットケーキ1枚、食パン1/2枚、ロールパン1/2個、ゆでパスタ50g、中華麺1/4玉、乾燥そうめん30g程度の摂取が可能になります。

近年もう一つの病態が問題になってきました。「食物運動誘発アナフィラキシー」と言います。起こしやすいのは学童期後半から成人です。原因となる食物を食べただけでは何も症状を起こしませんが、食べて2時間以内に運動をすると症状が誘発されます。アナフィラキシーとは発疹に加えて激しい咳き込み、ぜーぜー、呼吸困難や血圧低下などが加わるものです。その場合は重症として扱う必要がありますが、5000人に1人と稀です。原因食物には小麦が多いと言われています。学童期で小麦アレルギーを卒業できた方は、家の周りを走り回っても症状のないことも確かめてみましょう。

食べたら口の周りが赤くなったからアレルギー?湿疹が出たからアレルギー?心配事はいろいろ。公園に遊びに行くことに例えてみましょう。走り回れば転んでけがをするかもしれません。でも、家に籠りっきりになれば怪我はしないかもしれませんが、心が病んでしまうかもしれません。その方が問題。喘息があっても発作がなければ走り回ったって構いません。食物アレルギーの場合、重い方は厳密な除去も必要ですし、本人にとって不快な症状なのに無理に食べさせるべきではありません。ただ、本人も気にならない軽微な症状なら、むしろその量の範囲を積極的に食べることで治るかもしれません。アレルギーもピンからキリまであります。心配し過ぎて不必要に過剰な除去を続けることは、食事の楽しさを奪ってしまうかもしれません。卵も牛乳も小麦も大きくなれば治る可能性の高いものです。いつかはみんなと同じに食べられるようになりますよ。

以下に過去のブログで食物アレルギーの記事を抜粋しました。興味のある方は訪れてみてくださいね。

 

ミルク(牛乳)のアレルギー | あおきこどもクリニック

アレルギーの検査、、毎年するの? | あおきこどもクリニック

疑り深い警備部長と「白身玉子」さんー食物アレルギーのお話ー | あおきこどもクリニック

卵のアレルギー | あおきこどもクリニック

食物アレルギーの見分け方(即時型反応編) | あおきこどもクリニック

 

 

 

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