クリニック通信
2025年5月18日赤ちゃんにはとっても怖い百日咳 5歳・11歳で3種混合ワクチン再接種のお勧め
こんにちは。どんより蒸し蒸し、暑い日ですね。只今絶賛生育中の雑草軍団、ごめん君は何も悪くないんだけど、、抜かせて。
先ほど公開した麻疹のお話に続いて、今回は百日咳のお話です。春から流行が拡大し、当院だけでも20人以上の方が診断されています。名前の通り咳が強くてしつこい病気です。4種混合ワクチンの効果が残る乳幼児期は罹らずに済みますが、その免疫が切れる学童期に入ると罹りやすくなります。学童期後半から成人が好発年齢です。最初の1~2週(カタル期)は咳だけ。風邪と見分けがつきませんが、熱は出ないので発熱と咳なら百日咳は考え難いように思います。問題はその後。通常の風邪なら次の風邪を貰わない限り1~2週で咳は軽くなっていきますが、百日咳はそこからが本領を発揮します。咳は強くなる一方で、息継ぎも出来ずに顔を真っ赤にして数十秒間咳き込みが続きます(連咳発作)。それが1日数十回、夜中も全く眠れなくなります。息継ぎも出来ない咳発作の合間に思いっきり息を吸い込むので「ヒュウッ」と大きな音を立てます(レプリーゼ)。そんな状態が1月近く続くのです(咳嗽期)。辛い辛い、その間周りにもうつしてしまいます。診断はのどの拭い液を採取して検査センターに提出してPCR法で確定します。結果判明に1週間前後時間がかかるため、治療は前倒しで百日咳菌に効果のある抗生剤を処方します。結果の出る頃には楽になっていますが、一旦咳嗽期に入ってしまうと抗生剤も効きにくくなります。また、有効とされている抗生剤の効きにくい耐性百日咳菌も中国から流入してきています。
問題はワクチン接種をしていない2か月未満の赤ちゃんです。激しい咳で息継ぎが出来なくなって唇が青くなり(チアノーゼ)、咳の後に無呼吸発作を起こして数十秒間呼吸が止まり、命に関わる危険があります。過去に救急病院でこの状態の百日咳を経験しましたが、何週間も人工呼吸管理が必要になりました。脳症を起こすリスクもあります。突然死の原因にもなる疾患なので赤ちゃんには決してうつしてはなりません。問題は家庭で学童期以降の兄弟やお父さんお母さんが発症した場合、赤ちゃんにうつす可能性が高くなります。だから、ワクチンが大事。日本はワクチン制度が海外より遅れています。今はどの国でも百日咳ワクチンを含んだ4(5)種混合ワクチンを生後2か月から4回接種し、5歳時に3種混合でもう1回、11歳でも3種混合をもう1回接種して予防しています。日本では5歳児の追加接種制度はなく、11歳では百日咳ワクチンを除いた2種混合ワクチン接種が行われています。任意接種(有料)になっても構わないから5歳と11歳で3種混合の追加接種を行うべきです。また、このワクチンは妊婦さんにも接種できます。お母さんの体内で作られた免疫が赤ちゃんに移行することで、ワクチン接種開始までの2か月をカバーすることができます。生後間もない赤ちゃんを守るために、特に危険な百日咳菌とRSウイルスのワクチンは妊婦さんに接種して守る必要がありますよ。
4種混合ワクチンのお話は過去ブログも参考してみてくださいね。
2018年9月
4種混合ってなあに? 百日咳に注意 | あおきこどもクリニック