クリニック通信
2024年3月3日4月から赤ちゃんのワクチンデビューの内容が少し変わります
こんにちは。今日は穏やかな暖かい日ですね。クロッカスやクリスマスローズが「え~、そろそろ~?まだ眠いし、、」とぼんやりと花を咲かせ始めました。
今年の4月1日からワクチンが少し変わります。対象者は4月からワクチンデビューする赤ちゃんです。基本的に2月生まれで生後2か月の子たちと言うことになります。
変わるのは接種するワクチンが1本減ると言うこと。4種混合(ジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオ)ワクチンにヒブ(インフルエンザ桿菌B型)が加わり「5種混合ワクチン」になります。今までは2か月のデビュー戦でヒブ・肺炎球菌・4種混合・B型肝炎・ロタの4注射+1内服ワクチンで4回大泣きしたのが、肺炎球菌・5種混合・B型肝炎・ロタの3注射+1内服となり、3回泣きで済むようになります。痛い思いが1回減るだけでも赤ちゃんにとっては朗報です。
ただ、5種混合ワクチンは既に4種混合で始めた方には接種できないとのことです(交互接種制限)。4種混合ワクチンでデビューした赤ちゃんは4月を過ぎても4種混合しか接種できません。この辺りはお医者さんの間では大丈夫じゃない?という意見も多いのですが、石橋を叩き過ぎる行政としては認められないみたいです。無理に接種すると公費負担が下りず自費になる可能性があります。でも、地域によっては交互接種を認める自治体もあるようです。
もう一つは肺炎球菌ワクチンが13価から15価に変わります。ヒブも肺炎球菌も髄膜炎などの重症感染を引き起こす細菌で、ワクチンがなかった頃はこの地域だけでも毎年何人もICUに収容され、助けられなかった子もいました。ワクチンが始まってから重症感染症は激減しました。
実は一人っ子のヒブと違い肺炎球菌は大家族で数十種類の性質の異なる兄弟(株)がいます。その中でも乱暴者でハングれした7種類の株を対象にしたのが、最初に始まった7価肺炎球菌ワクチンです。ワクチン開始後ヒブの重症感染症は1/10に減ったのですが、肺炎球菌の重症感染症は半分にしか減りませんでした。どうもそれまで7種類の乱暴者の陰で大人しくしていた他の兄弟達が、彼らの力が衰えてきたのをいいことに「次は俺様の時代だぜ~」と乱暴を始めたためのようです。そこで今度はそいつらも対象にした13価、更に15価と対象株を増やしたワクチンが開発されました。15価の肺炎球菌ワクチンは4月から切り替わることになり、今まで13価で接種してきた方も切り替えが可能です。
「それならヒブも4混も肺炎球菌もB型肝炎も混合してしまえば1回で済むじゃん」と思う方も当然出ると思います。実際、海外ではヒブ+4混+B型肝炎の6種混合ワクチンが行われています。ただ、肺炎球菌だけは押さえる株の種類も変動も多すぎて一緒には出来ないようです。また、海外では麻疹/風疹+ムンプス(おたふく風邪)のMMR混合ワクチンや麻疹/風疹+水痘+ムンプスのMMRV混合ワクチンも行われていますが、日本ではMRワクチンしか採用されておらず、髄膜炎や難聴など合併症の多いムンプスは未だに定期接種にさえ入っていません。接種方式も世界中が生ワクチン以外は筋肉注射ですが日本では皮下注射でした。筋注の方が痛みも腫れも少なく免疫の付き方も良いのに。この辺りが日本のワクチン行政の遅れているところです。今回の新しい5種混合と肺炎球菌ワクチンではようやく筋肉注射も採用されました。
予約システムは現在新しい制度に合わせて変更依頼中です。それまでの間、4月1日以降にワクチンデビューされる方はお電話で予約をお取りください。尚、このワクチンに合わせるためにワクチンデビューを遅らせることはお控えください。どれも重症化しやすい感染症。遅らせたことで罹ってしまったら元も子もありません。
次はムンプスワクチンの定期接種化とMMRV混合ワクチンの導入に期待したいところですね。