クリニック通信

2023年3月25日咳は止めるべき?

こんにちは。今週始めは暖かかったですね。ビオラは「ついに俺たちの時代が来たぜ!」と花を増やし始め、水仙が「ハルキタ~、ハルキタ~」とラッパを吹いています。一転今日は寒い寒い。せっかく桜が咲いているのに、、。健兎はお月様に引っ越して1年になります。お彼岸には帰って来たかな?何してんの~?と肩をカリカリして来そうです。

「強い咳止め」を求められることが少なくありません。お気持ちはわかるのですが複雑な気持ちです。咳は痰を吐き出すために必要な防御反応なので、無理に止めるべきではないと言うのが医学的な考え方だからです。風邪をひくと鼻水や痰でばい菌を包んで咳で体外に追い出そうとします。咳は本来味方なので、長い間咳止め薬は開発されていません。小児でよく使われるのは2~3種類くらい。その効果は何れも強くありません。強くするべきではないからです。

私たちが処方する時に留意するのは、咳止めを強くするのではなく、痰を出させることです。痰を柔らかくして滑りを良くする去痰薬はその効果が証明されています。痰をうまく吐き出せればその分咳は軽くなります。乾燥した空気は痰を固くしてしまうので、加湿器を枕元に置いてみるのも一案です。小さなお子さんの咳の原因の多くは鼻水が喉の奥に垂れ込んで来る「後鼻漏」によるものです。加湿して鼻の入口に溜まった鼻水を吸引機で吸い出してあげることも有効です(2018年11月ブログ「鼻水たらたら」をご参照ください)。

「咳止めのテープ」と言われているものは、本当は咳止め薬ではなく気管支拡張薬です。喉の炎症による風邪の咳には効果がありません。ただ、乳幼児は気道が短く細いため気管支にも炎症を起こしやすい傾向があります。喘息をお持ちの方や気管支炎の併発が疑われる場合には処方することもあります。

海外には咳止めがありません。その代わり「はちみつ」が重宝されており、市販薬と同等以上の効果も報告されています。ボツリヌス菌が含まれている可能性があるため、免疫の弱い1歳未満のお子さんには使用出来ませんが、寝る前に小さじ1杯分のはちみつをお湯に溶かしてゆっくり飲ませることも一案です。大きなお子さんならのど飴もいいでしょう。荒れた喉の粘膜表面を唾液で覆うことで楽になります。

大人と違って痰の出し方が下手っぴなこどもは、病気が重くなくても咳の仕方が派手です。仰向けに寝た姿勢では喉に鼻水や痰が溜まり、寝てから1時間くらいは咳が強くなる傾向があります。また、眠っている間は呼吸が静かですが、目覚めた時に深呼吸になるので乾いた喉の粘膜を刺激して咳き込むこともあります。活発に遊んでいる時も荒い息が喉を刺激します。咳の加減がうまく出来ずに咳き込んだ拍子に吐いてしまうこともよくあります。大事なことは重症度を見極めることです。緊急性のある咳は大雑把に言って2点です。①咳き込んだ時に唇が青くなる時。②咳をしていない時も「ヒーヒー」した音が胸から聞こえて、息を吸うたびに大きく喉元が凹む時です。前者は百日咳の時。息継ぐ間もなく体内の酸素濃度が低くなると唇の色が青くなります(チアノーゼ)。赤ちゃんには危険な病気なので4種混合ワクチン接種による予防が必須です。後者は急性細気管支炎か喘息の時。痰が絡むだけなら音の質は「ゴロゴロ」ですが、気管支の細いところが狭くなると高音「ヒーヒー」になります。喉が凹むのは呼吸しづらい時の症状です。いずれの場合も救急病院を受診する必要があります。

保育園に行けばあちこちから風邪をもらって、いつまでも咳鼻出っ放しの子はたくさんいます。咳も鼻も本来は味方です。お薬に頼らなくても自分の免疫の力でばい菌退治が済めば自然にゆっくり落ち着いて来ます。咳が出た=風邪薬と考える必要はありません。見た目に強く見えてもその後元気で夜中にぐっすり眠れるなら心配ありません。夜中に何度も起きてしまう時には寝不足で体力を落とさないようにお家で大人しくして、少しだけ風邪薬を飲んでみましょう。ぐっすり眠れるようになって元気があれば、少しくらいの咳には目を瞑って、お薬も止めて外に遊びに行きましょうね。

もう少し知りたい方は過去のブログ2015年9月「咳、鼻水、熱は悪者?」2014年11月「鼻水を制する者は咳をも制す」2014年9月「風邪薬はいつまで飲むの?」2013年10月「咳の続くお子さんへ」もご覧ください。

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