クリニック通信

2021年11月18日鼻水たらたら

こんにちは。穏やかな天気が続きますね。庭のプランターに植えたビオラに6月に巣立っていったツマグロヒョウモン蝶が帰ってきました。久しぶりだね。そんなことお構いなしに、健兎はビオラの花をむしゃむしゃ食べています。

秋は園・学校・市の集団検診、各種学会・委員会、インフルエンザワクチンに新型コロナワクチンまで加わり大忙しです。気が付くと前回の投稿から2か月も経ってしまいました。すっかり遅くなってごめんなさい。そして、10月からの鼻風邪ウイルスの大流行、外来は鼻水と咳で溢れています。子どもたちは鼻ちょうちんを膨らませたり、ナイアガラの滝のようにダアダア鼻水を垂らしながら、「ブション、ブション」と私の顔に鼻を飛ばしてきます。

毎年流行るこの風邪。主役やライノウイルス。「ライノ」はギリシャ語で「鼻」の意味。文字通り鼻がタランタランいつまでも続く風邪ウイルスです。それ以外にも多種の鼻風邪ウイルスが流行る時期なので、子どもたちは次から次と風邪をひいて何週間も鼻をたらしっぱなしです。ウイルスだけではありません。ダニやブタクサ、イネ花粉類のアレルギー性鼻炎も10月が鼻盛りです。そして血管運動性鼻炎と言って、自律神経の反射で朝起きた時に思いっきり吸った冷気に鼻の粘膜が反応してくしゃみを連発します。

風邪の鼻水は最初こそ透明ツルツルですが、そのうちネバネバして色もついてきます。アレルギーの場合は鼻は詰まるものの鼻水は2週間経っても3週間経っても透明ツルツルです。特定の場所や条件で(ブタクサの生えている公園や、稲刈りシーズンの田んぼ道、押し入れから久しぶりに出した布団にダイビングした時など)急に症状が強くなります。目の痒みも伴うとより疑わしくなってきますが、3歳未満の小さい子には稀です。血管運動性鼻炎は朝の冷気を吸いこんだり熱いラーメンを啜った時など温度が急に変化した時に起こります。

小さいお子さんは鼻をかむことを知りません。鼻の穴も小さいのですぐに詰まります。鼻水は奥に溜まって喉に垂れ込み、喉の奥から「ゴロゴロ」聞こえてきます。痰を出すことも知らないので、溜めるだけ溜めてから思いっきり咳込みます。胃と食道の弁もゆるいので、咳込んだ拍子に痰と一緒に吐くこともあります。大人なら鼻をかんで痰を出せるのに、子どもはうまく出来ないから実際の病気は軽くても見た目が派手になるのです。

寝てから1時間程して体が温まってくると、鼻水や痰が増えて来ます。仰向けに寝ていると喉に溜まりやすい状態になり、むせ込みやすくなります。また、眠りが深い間の呼吸は浅く静かですが、目が覚めた時に深呼吸をしたり寝返りをうつと、急に吸い込んだ空気に粘膜を刺激され、鼻痰もずるっと垂れ込んできます。だから、風邪の咳鼻は寝てから1-2時間と朝起きた時に増えるのです。

咳も鼻も本当は必要なもの。気道に入ったばい菌や異物を追い出そうとしている防御反応です。無理に止めることはばい菌を追い出す邪魔になってしまうかもしれません。長引いて見えるのは、年齢的に鼻をかんだり痰を出す技術が伴わないためいつまでも鼻水を溜め込んでしまうから、症状がなくなる前に次の風邪をもらってしまうからです。

残念ながら風邪の鼻水にあまり有効なお薬はありません。鼻炎のお薬(抗ヒスタミン薬)はアレルギー性鼻炎以外にはあまり効きません。鼻や痰を粘調化させる弊害もあります。鼻は詰まるから辛いのです。むしろ鼻水を緩くして流れやすくした方がメリットがあります。大事なことは「過湿」です。鼻が詰まると口を開けて眠ることになります。秋冬の乾燥した空気の中で口呼吸を続けると一晩で喉の粘膜は荒れて、喉が痛くなり咳も増えます。また、鼻水自体も乾燥によってネバネバして鼻詰まりがひどくなります。加湿器があれば枕もとに置いて鼻や喉の乾燥を防ぎましょう。赤ちゃんにとっては鼻を吸うことはお薬以上に効果的です。お風呂の後は鼻水が加湿されて緩くなって吸いやすくなります。鼻吸いチューブは手軽ですが、吸う方は結構疲れます。「エレノア」や「メルシーポット」など赤ちゃん用の電動式の鼻吸引器は1-2万円しますが、使う頻度の高さを考えると用意しておく価値があります。耳鼻科の先生の受け売りですが、ネバネバした鼻水の場合は生理食塩水を数滴鼻に垂らしてから吸ってみると吸いやすくなります。重曹食塩水は鼻水のネバネバを低下させてくれます。500mlの水に食塩5g、重曹2.5gを混ぜて0.5-1ml程度を点鼻してから吸引すると効果的なようです。

鼻水で注意するのは「汚い鼻水が長く続くこと」です。ウイルス風邪の鼻水は一時的に黄緑になりますが、多くは1週間以内に白・透明に戻ります。時々うす黄色いとか朝方少し黄色い程度なら様子を見ても良いですが、1週間以上連日多量の黄緑鼻水が続く場合は、鼻の奥で細菌が繁殖していつまでも炎症を起こしている可能性があるので抗生剤の使用を検討します。大きい子なら頑固な鼻閉が続いて鼻の両脇の痛み出す時は蓄膿症のサインです。学童期前後で数週間に渡って透明つるつるの鼻水が続き、目のかゆみも伴うようならアレルギー性鼻結膜炎として抗ヒスタミン薬やアレルギー用点鼻薬が出番です。ただ、採血は痛くて怖いから、鼻水が長いからとすぐにアレルギー検査を考えるのは止めておきましょうね。鼻水が透明で、熱もなく、ぐっすり眠れて元気なら多少長引いていても心配ありません。

風邪に限って言えば、集団生活をしている限りお互いに貰いあうことは避けられません。緊急事態宣言並みの休園を続けていれば多少かぜをもらう可能性は減りますが、現実的ではありません。兄弟や保護者からもらうこともあります。秋から冬の鼻風邪シーズンは「with鼻水」とある程度割り切った方が良いかもしれません。鼻水とどう付き合うかが大事です。眠れない時、辛い時は自宅で安静を保ちながら積極的な治療を、よく眠れて元気で鼻水も白・透明なら自然に治るのを待ちながらいつも通りの生活をしましょうね。最終的にはお薬を飲まなくても自分の免疫の力でゆっくりゆっくり治って行きますよ。

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