クリニック通信

2020年2月16日もしコロナが流行しても、心がけることは変わりません。

こんにちは。寒い!と思ったのも束の間。まだ2月半ばだと言うのに暖かい日ですね。田んぼ道を散歩していると、1月頃から既にオオイヌノフグリが青い小さな花をたくさん咲かせています。「ちょっといつもより咲くの早いんじゃない?」「今年は早くからあったかいんだよね~」「だよね~」「よね~」「ね~」。「ポカポカなんだ~」「ポカポカ~」「ポカポカポカポカポカ~」みんな口々に大騒ぎです。健兎も日向ぼっこで間延びしています。

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インフルエンザは少し落ち着き、今は発熱の方も減り、検査の陽性率も1割前後まで減っています。代わりに新型コロナウイルスの報道が連日続いています。国内感染も発生し、流行が拡大しないか心配されている方も少なくないかと思います。

新型インフルエンザが流行した2009年の秋、私は救急病院に勤めていました。日曜の救急外来当直には300人近い患者さんが押し寄せました。非番の医師も召集しましたが、カルテは高く積み上がり、待ち時間は2時間を超えました。廊下から苛立つ親御さんの怒鳴り声も聞こえてきます。私も人間、それも小心者。早く診ようと焦ります。無我夢中でした。激務で消耗し、集中力が落ちて判断を誤らないか不安にもかられました。一番の問題はその中に数名だけど重症の方がいたこと。インフルエンザとは関係ない疾患の方もいました。トリアージをしても診察が遅れます。入院させても様子を見に行くことが出来ません。救急機能がマヒしかけていました。同じことを繰り返してはいけません。

感染症の強さはいくつかの視点で判断されます。一つ目は感染の仕方。最も強いのは麻疹などの空気感染。咳やくしゃみで飛び散った微小な飛沫核の中で空気に乗って、一緒の部屋の中に居るだけで離れていてもうつります。コロナやインフルエンザを含めた大半の感染症は飛沫感染。くしゃみや咳でも1-2m程度しか飛ばないので、離れていればうつりません。ただ、テーブルなどに飛び散った目に見えない飛沫物を触り、無意識に目や鼻を擦ると粘膜を介して感染します。だから流水と石鹸によるまめな手洗いが最も大事な予防です。不特定多数の触るドアノブのアルコール消毒や手すりを不用意に触らないことも予防につながります。マスクは手洗いより防御力は落ちますが、多くの人と近接する時には効果が期待でき、鼻を無意識に擦ることも防ぐことが出来るでしょう。その意味では眼鏡も効果があるかもしれません。花粉症対策がそのまま感染症対策に繋がります。ただ、広い公園を散歩する時など、人と接する機会がない場所では必要ありません。マスクが本当に必要な人は咳やくしゃみが止まらない人です。

2つ目は発症する力です。インフルエンザや麻疹は感染すると予防接種をしていなければ高い確率で発症します。コロナは不顕性感染(症状のない感染)もあるので、必ずしも発症力は高くないように思えます。免疫力を高く保っていれば発症を免れることも期待できます。充分な睡眠は免疫力を高め、加湿は粘膜の防御機能を強化させます。

3つ目は毒性の強さ。エボラウイルスは致死率も50%と高く非常に危険です。中国内のコロナの致死率は2~3%です。決して低くはありませんが、一方、中国以外の国の致死率は1%を下回り、インフルエンザと同程度とも言われています。肺炎を起こしても軽症で回復する方も少なくありません。中国の致死率の高さは流行初期で病気の存在自体が分からなかったことから重症化に気づけなかったことや、急速な患者数の増加に医療機関の対応が追い付けなかったことも影響しているようです。病院が重症例にしっかり対応できるように、予防を徹底して広がる速度を遅らせることは、危険度をより下げることにも繋がります。また、重症度と年齢には相関があるようです。高齢で基礎疾患のある方は注意が必要ですが、乳幼児の重症例は殆ど報告されていません。

症状は一般の風邪と同じです。咳や鼻水、発熱や倦怠感。症状で見分けることは出来ません。咳や鼻水が出てすぐに病院に行っても、現時点ではコロナの迅速検査キットはありません(衛生研究所の対応能力に限界があるので、検査は本当に必要な方に限るべきです)。抗ウイルス薬はなく、抗生剤は無効です。対症療法である風邪薬も辛い症状でなければ必要ではありません。大半は自然に治っていきます。自宅で加湿と水分補給を心がけ、充分な睡眠をとることの方が効果的です。大事なことは重症化の判断です。夜間全く眠れない激しい咳に加えて発熱が4日以上続くこと、呼吸数が1分間に50回を超えること、喉元を大きく凹ませて苦しがること、唇の色が紫になっていること。これらが肺炎や呼吸困難を疑うサインです。コロナに限った話ではありません。他の感染症と予防の仕方も重症度の評価も変わりません。

大事なことはデマに翻弄されないこと。パニックを起こさないこと。マスクが一気に売り切れてネットで高額で取引されていることもパニックの一つ。近隣でも「某ショッピングセンターでコロナの患者が発生し救急病院に入院した。」と言う情報が流れたそうです。その病院の医師曰く「入院してないよ」。匿名のSNSでは、残念ながら事を面白がって煽ったり、フェイクニュースを流す方が居ます。真偽を良く考えずに慌てて拡散させる人もいます。専門家より身近な人の言葉を、扇情的なことや怖いことを信じやすい傾向があります。不安はそれを加速させます。匿名のSNS情報より、きちんと裏付けを取った新聞や報道番組を信じましょう。日本人は冷静な民族です。大災害に見舞われても、互いに助け合い、規律と礼節を守ってきました。まだ、大流行したわけではありません。心がけることはいつもと同じ。予防を大事に、不安な気持ちに溺れず、もし、流行が広がったとしても、重症な人が速やかに病院で治療を受けられるように協力し合いましょうね。

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